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裁判官の罷免について
裁判官を務めていた者として、大きな衝撃でした。
日本国憲法は、
「国会は」「裁判官を弾劾するため」「弾劾裁判所を設ける」(64条1項)
と規定し、
裁判官は、その独立が保障され(76条3項)、
国会や内閣をおそれずに司法判断ができるとされながら、
最終的には、国会(すなわち選挙による国民の代表者)によって罷免され得ます。
これが、社会や公民、政治倫理で教えられている権力分立(司法権対国会)の、
もっとも際立つ一場面です。
裁判官を国会議員が罷免できるということは、最終的には、国民の代表者、
すなわち民意が優先されると理解できます。
裁判員裁判が立法化され、既に制度として定着してきたことも、
司法に民意を
という国民の要請や社会なのだと思います。
そうすると、今回裁判官を罷免したのも、制度としても、そして今般の社会としても、
国民の意思なのだろうと考えられます。
一方で、罷免というのは、極めて重い処分です。
国民には、表現の自由(憲法21条)もあります。
裁判官という職責に権力があり重すぎるからこそ、重い処分があり得るのか。
あるいは、表現の自由も憲法上保障された権利ではないのか。
権力分立とは・・
日常生活で憲法に想いを馳せることは少ないと思いますが、権力分立、
最終的には民意とは・・・
深く考えなければならないと感じています。
*個人的に思うこと
裁判官には、憲法が与えた強大な権力があります。
ただ、務めている当時、それを大きく意識することはありませんでした。
法律に沿って日々の裁判等に携わるだけで精一杯でした。
ただ、退官した後、「あれが権力だったのか」と何度も感じました。
裁判官の当時、権力がいかなるもので、それを行使する者はどう振る舞うべきで、
社会人として具体的にどう生活すべきなのか、
システム化された教育はありませんでした(今はあるのかな?)。
裁判官に重大な処分に見合う重大な権力があるならば、個々の裁判官に対し、
組織として、細やかな支えや日々の指導が必要ではないでしょうか?