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コラム

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相手方・裁判所に送った書面なども、守秘義務やプライバシーに配慮した上で、
分かりやすくご紹介できればと思っています。

刑事事件

責任能力(京アニ事件に関連して)

昨日、京アニ事件の第1回公判の報道がなされました。
争点は、責任能力のようです。

責任能力とは、
1)事理弁識能力(物事の善悪を判断する力)
2)行動制御能力(1の判断に基づいて行動をコントロールする力)
の二つであると考えられています。

そして、刑法39条は、
1項 心神喪失者の行為は、罰しない
2項 心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する  と定めており、

刑の減軽は、刑法68条で、
1号 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮 又は10年以上の懲役若しくは禁錮
(無期又は10年以上の拘禁刑)  と定められています。
※適当に刑を短くする、という趣旨ではなく、法律に沿った範囲になります。

この度の事件は、被告人が事実関係を認める罪状認否をしており、事実を前提として、
被害に遭われた方、その周りの方に、特に亡くなられた方々に、深く哀悼の意を捧げます。

その上で、適正な裁判が行われ、適切な刑罰が検討されることを祈ります。

刑法39条は、国民の合意(同意)によって、今も厳然と効力がある法律です。
例えば、幻聴や幻覚がある精神疾患に上記1・2を支配されて行われてしまった犯罪も、
過去多々あります。
私も裁判官の当時、心神耗弱の判決に携わったことがあります。
精神疾患で適切な医療を受けていても、とある引き金やストレスにより瞬間的に症状が増悪し、
引き起こされてしまった事件もあります。
ですから、刑法39条そのものは、必要な条文です。

一方で、この事件で心神喪失・耗弱の主張がされるのが許せないという意見も目にしました。

裁判官・裁判員は、適正な手続に沿って、深く検討してくださるでしょう。
この事件の増田裁判長は、私が大阪地裁在勤当時、とても明晰で、そして素晴らしいお人柄で、
感銘を受けて憧れた裁判官のお一人です。
増田裁判長なら、この大変で難しい事件を、当事者だけでなく、国民が納得できる形で、
進行していってくださるような、そんな信頼を抱いています。

他方、この事件に関わることは、裁判官・裁判員共に、大きな重圧やストレスもあると思います。
裁判官たちは裁判員さんたちに配慮しながら進めていくと思いますが、
裁判官含め皆さんの心身にできる限りのケアがなされるようにと願います。

※近年は個別の事件の裁判長がクローズアップされる報道は見ませんが、昭和の時代は、
「裁判長の人柄」などとして、新聞の1面を使って、写真付きで経歴などが載っていました。
(「知る権利」などの古い、そして権利意識の芽生えや報道が熱かった昭和の時代)
そんな時代は過ぎましたが、増田裁判長に陰ながらエールを送りたく、本コラムを書きました。

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