遺言と相続
特別受益・持戻し(免除の意思表示)について
先月の遺産分割に関する講演の宿題です。
【特別受益と持戻し(免除の意思表示)について】
1 特別受益とは(民法903条)
相続人のうち、遺贈や生前贈与において特に利益を受けた者がいる場合、公平の観点から、
計算上贈与等を持ち戻して相続分を算定すること です。
2 類 型
・婚姻または養子縁組のための贈与
・学費・教育費(ただし、昨今の進学状況に照らして認められることは少ない)
・生計の資本としての贈与
・扶養義務に基づく援助 など
講演時にお話ししましたが、「寄与分」が認められるハードルはなかなか高いのに対し、
特別受益については、金銭の移動が証明でき、高額である場合(感覚としては数百万円)、
認められることは珍しくありません。
3 持戻し免除の意思表示(民法903条3項)
被相続人は、意思表示によって、特別受益者の受益分の持戻しを免除することができます。
受益者に特別な取り分を与えることもまた、被相続人の自由で、その意思を尊重すべきと
考えられているからです。
この意思表示が明示(書面等に残されている)の場合は問題が少ないですが、黙示の場合、
どのような事情があれば、【黙示の持戻し免除の意思表示があるといえるか】争いになり、
判例により、いくつかの判断要素が挙げられています。
4 夫婦間の持戻し免除の推定規定(民法903条4項)
なお、老後の生活の安定や生活保障に鑑み、配偶者に対する居住用不動産の贈与等の場合の、
持戻し免除の意思表示の推定規定があります。税法上の優遇措置と同じ考えによるものです。