刑事事件
証拠の捏造があり得るか?
昨日、袴田事件の再審判決が出されました。
詳細については、判決全文をよく読ませていただいてから、あらためてコラムで扱います。
今回は、報道されている、認定された証拠の捏造について。
証拠の捏造があり得るのでしょうか?
私は、以前、地方裁判所等で、令状審査に当たる裁判官の職に就いていました。
令状主義:捜査に関する令状は、必ず司法審査を経なければならないこと
憲法33条・35条
逮捕や勾留、捜索差押等は、捜査機関(警察や検察)が裁判所に令状を請求し、
裁判官が認めたものだけが執行されます。
すなわち、執行されたすべての令状は、裁判官が許可をしたということです。
しかしながら、捜査機関のすべての請求を、裁判官が許可しているわけでありません。
例えば、捜索差押は、捜索差押の対象物が、その場所にある蓋然性が必要です。
なぜなら、何の関係もない場所に捜索差押ができるとしたら、無関係な人が巻き込まれたり、
被疑者についても、不当な人権侵害が起こり得るからです。
とはいえ、捜査機関も、被疑者と考えている者の証拠を取得したいという動機があり、
これが高まりすぎることがあります。
私が経験した事件で、令状を却下したものには、
既に3か月前にその場所を捜索差押しているのに、また同じ場所を捜索差押したい
というものでした。
一度はなかった同じ場所をわずか3か月で捜索差押するには、
【その3か月にその場所に対象物が存在する事情がある】ときに、
捜索差押場所に対象物がある蓋然性があるといえます。
その事件では、その場所は3か月間放置されており、そのような事情はありませんでした。
請求者と協議し、令状は却下しました(事実上は請求者が取り下げます)。
この事件をよく思い出すのですが、捜査機関も本来ならむやみな捜索差押をしたくないでしょう。
ただ、被疑者を確保したい、事件の真相を明らかにしたいという正義感が、
行き過ぎた捜査を行うことに繋がることは想像に難くありません。
凶悪事件であったり、なかなか被疑者が確保できない場合などに、捜査機関の正義感が、
残念な連鎖が重なるなどして、暴走するということはあり得ると思います。
袴田事件がどうだったのか、時間が経ち過ぎてはいますが、判決で勉強させてもらいます。
このように、裁判官は、令状請求を審査することにより、人権を守る役割があります。