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また、当事務所をより知っていただくため、実際の事件の解決までのアレコレや、
相手方・裁判所に送った書面なども、守秘義務やプライバシーに配慮した上で、
分かりやすくご紹介できればと思っています。
離婚
不倫(法律の世界では不貞といいます)が発覚した場合、不貞された側は、配偶者に対しては当然のことですが、不貞相手にも賠償金を請求することができます。
ただ、通常は、不貞相手だけを相手に慰謝料を請求し、配偶者に対しては離婚調停や、離婚訴訟で不貞を含めた慰謝料を請求することが多いと思われます。
配偶者と不貞相手を共同被告として訴訟提起することは可能で、そのような例もありますが、事案としては少ないと思います。理由としては、配偶者より不貞相手から払ってもらいたいという請求者側の心理的側面が大きいように思います。
請求する側において、不貞があったことの立証をする必要があります。
などがこれまでの立証手段でしたが、最近はスマホを使ってのやりとりが増えているので、
などによって、具体的なやりとりまで明らかになることが増えてきました。
メールの文面が直接証拠となりますので、以前と比べると立証が容易になってきている印象です。
特にLINEについては、やりとりの全履歴をテキストデータとしてメール送信することができるので、配偶者の携帯電話から直接自分にメール送信して証拠保全することも可能です。
なお、不貞相手の方から、積極的に夫婦関係を壊そうと思ってしたことではないとの反論をしても不法行為性(違法性)には影響しません。最高裁は、配偶者と不貞相手の関係が自然の愛情によって生じたとしても、不貞相手の行為は違法性を帯びるとしています
【参考】
「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫または妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある。」(最高裁昭和54年3月30日判決)。
すなわち、既婚者であると知りながら、あるいは容易に既婚者と知り得る状況で不貞行為に及べば、違法性を帯びるということになります。
不貞相手が配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせた場合など、夫婦関係を意図的に壊したといった場合に限定しないというわけです(もっとも、このような不貞行為の態様については慰謝料額には影響します)。
不貞行為開始時において、婚姻関係が破綻していた場合は、慰謝料の支払い義務を負わないこととなります。
そのため、不貞相手から婚姻関係が破綻していたとの主張立証がなされることが非常に多いです。
請求する側は、その間同居していたとか、家族旅行に出かけていたとか、夫婦関係が破綻していなかった事情を主張立証していくことになります。
【参考】
「夫が第三者と肉体関係を持った場合において、それが妻に対する不法行為となるのは、それが婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害する行為ということができるからであって、婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、妻にこのような権利又は法的保護に値する利益があるとはいえないから、右第三者は妻に対して不法行為責任を負わないものと解するのが相当である。」(最高裁平成8年3月26日判決)
まず、既婚者であることを知っていたか、過失で知らなかったことを立証する必要があります。
不貞相手の認識を立証する必要があるので簡単ではありませんが、
といった事情から過失を立証したりします。
もっとも、LINEやメールで配偶者に直接的に言及されている場合もあります。この場合は、配偶者がいたことを知っていたということになりますので、これだけで故意が立証できます。
なお、婚姻関係が破綻していたと聞かされて、不貞関係を開始したが、真実は婚姻関係が破綻していなかったという場合があります。
この場合、不貞相手から、婚姻関係が破綻していたと信じていたとして、過失がない旨の主張がなされることがあります。
もっとも、相手方は本当に破綻していたのかある程度調査すれば分かったはずであるとして、過失ありとされる事案がほとんどです。
精神的損害を被ったことを立証することになります。
損害額は、100万円から250万円の間で認められることが多いですが、
などを勘案して判断されます。
実は、不貞相手への慰謝料を制限する法制度や不貞相手への慰謝料請求を否定する国もあります。我が国の裁判例でも、夫婦関係の維持の主たる責任は配偶者にあるとして、不貞相手への慰謝料請求を制限的に解釈するものがあります(配偶者の慰謝料より減額した額を認定する例も見られます)。
不貞は公然と行われるわけではないため、不貞慰謝料という事案については、証拠がどこまで揃うかということが、結論に大きく影響します。
不貞について疑念を持っただけで、十分な証拠がないのに安易に請求をしてしまうと、証拠を隠滅されてしまう可能性が高くなります。
請求する前に証拠を集めることがとても重要です。
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