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刑事事件

罪(刑)に相場はあるか?

先の清原(元)選手のニュースに触れたコラムで、
罪(刑)の相場という言葉を出しました。

罪(刑)に相場はあるか?

私は、ある、と考えています。

日本の裁判官は、個々の裁判官が、独自に(自由に)刑を決めているわけではありません。

例えば、前科前歴のない人が、覚せい剤を1回使用したとして起訴された。
個々の事情はとりあえずおいておき、
東京地方裁判所のA裁判官は執行猶予、
福岡地方裁判所のB裁判官はいきなり実刑で懲役1年半。
これでは、国家の刑罰権の公平性・統一性を保つことができません。
国民とすれば、どの裁判所・裁判官に当たるかが重要となり、
また、覚せい剤は〜でやれば刑が軽い、窃盗は〜でやればお得、
などと治安がめちゃくちゃになるのです。

個々の裁判官は、国家の刑罰権を与えられた権限によって発動しているわけで、
ですから、国家としての公平性・統一性を尊重し、
そのことによって、国家としての司法や治安を守っていることになります。

そこで、裁判官は、それぞれの事件について、
似たような事件では先例でどのような刑になってきたのか、
慎重に慎重を重ねて調べます。
裁判所では、先輩裁判官が先例が保管された部屋にこもって調査を重ねる背中がありました。
「自分だけ不公平な刑を課してはならない」、
刑事事件を担当する裁判官は、常にこのような想いを背負っています。

そして、国家の刑罰権の公平性・統一性を図った上で、
個々の事情があります。
裁判官は、個々の事情により、その先例からうかがえる相場から加減していきます。
これが、多くの裁判官の刑を決めるプロセスだと思います。

この先例からうかがえる相場、裁判官がこれにとらわれることを、
批判・非難する記事やご意見を目にすることもあります。
裁判官は何も考えていない、血が通っていない、ロボットと同じだ、など。

このような記事やご意見にも、それを支えるご事情があることも分かります。

しかし、裁判官には、国家としての刑罰権の公平性の尊重という観点もあるのです。
そして、そこから、「相場」が導かれてしまいます。

このことの是非には、上記のように様々な議論があるでしょう。

この是非は、個々人が考え、議論し、日本の司法が発展すればよいですね。

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